戦争には傷が付き物だ。
もちろん自分もしがない一兵卒だが、相手の矢を喰らってしまった。
将軍クラスの人物に当たるよりはまだマシだと思うけど。
痛いものはやっぱり痛い。
聞くところによれば命に別状はないらしいが、どうやら毒矢のようらしい。
いくら大丈夫と言われても、毒が身体を巡っている感覚は首を締められている感じだった。

まぁ何もなくベットの上で休む日々が続いた。
本当に医者の言ったコトは正しかったようで、毎日自分でも元気になっているのが分かる。
戦には勝ち、周りは平和なモノだ。
早くその輪の中に入っていきたいのだが。

「元気ですか?」

幕が上げられ、人影が入ってきた。
手には桶を持っている。

「あ、はい。小喬様」
「それはよかった。もう少しで動けるらしいので、がんばってくださいね」

そう言って、太陽のように笑う。
太陽は布を通しては最近は見ていないが、彼女の笑顔は思い出させるには十分だった。
頭についている大きな髪飾りが、猫を連想させる。
背も男性に比べれば頭1つ、2つも小さい。
それでも彼より年上なのだからわからない。

「身体を拭かせていただきますねー」
「え?小喬様にそんなコトをさせるワケには…」
「いいんです。私に出来る事などこれくらいなのですから」

手も届かない位遠い男性の妻に肌を見せるなど言語道断なような気がしたが、言い切られ反対するわけには行かなかった。
子供もいるらしい。
らしいのだが、顔は童顔のようで、背も小さく、肌も滑々だ。
薄い布を押し上げる胸は近くで見ると意外にあり、ちょっと気を許すと反応してしまいそう。
普段よりも際どい服装なのは気のせいだろうと納得させる。
…見てはいけないのだが、つい視線が胸へと。

「……」

立派な谷間が聳え立っている。
気を本当に許してしまっていたのだろう。
暫く見入っていた。
と、小喬が顔を上げる。
ほんの一瞬だが、両者の視線が交錯した。

「…」

だが、彼女は気にする素振りを見せず立ち上がった。
正直に言おう。
もっと見ていたかった…コレの方が多い。
ドキドキして、きっと顔も赤くなっている。
何故か、小喬も彼と同じ状態だった。
なにもしていない…はず。

「…誰もいませんよね?今日はお祝いだってみんな行ってしまいましたし…」
「そうなんですか?」
「はい。そのはずです…。だから、誰も近くにはいません…」

しどろもどろになりながら、彼女はベットに近づいてきた。
じっと、視線を動かさずに。

「あの…お医者さんが言っていたんですけど…貴方が受けた毒は、普通じゃないらしくて…」
「?」
「…ちょっといいですか…その…あの…」

小喬は視線を彼に送る。
視線の先は…立派なテントが張っていた。

「っ!?」
「あ…」

咄嗟に布団で隠す。
しかし、過去は隠せない。
頬を赤くしながら、小喬が更に近づいてくる。

「苦しい…でしょう?私が鎮めてさしあげます…」
「いえ、そんなことはっ…!」

もっと近くに彼女の顔。
二人の視線は動かずに。

「誰も夜までは帰ってきません。ですから…」

夫のコトとか、子供のコトとか。
色々な思考が頭を支配して、だから何も話せない。

「満足すればいいそうですから…気持ちよくなってください…」

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