「ここにも、もう来ないかも知れないな」
門の前で都を振り返り、劉協は馬に跨がり一人呟いた。
皇帝だったのも昔のこと。既に曹丕に禅譲し、その曹丕に地方へと左遷されたところなのだ。
妻は、ここに置いて行こうと決めていた。都にいたほうが安全だし、なにかと便利だろう。
そもそも政略結婚だったのだ。曹節のことは好きだったが、つらい思いをさせるわけにもいかない。
皇后ではないにしろ、皇帝の妹である。生活に不自由することはないはずだ。
「曹節・・・さらばだ」
再び馬を走らせようとした、その時だった。
「劉協様!待って下さい!」
聞き慣れた声に思わず振り向くと、1騎、こちらに走ってくる。
劉協は慌てて馬を止めた。やってきた騎馬に、見知った顔があった。曹節だった。
「曹節、どうしたんだ?見送りか?」
「いえ・・・劉協様、私も・・・共に行かせて下さい」
「それは、曹丕殿の指示か?」
「違います」
劉協にはそれ以上の理由は思いつかなかった。今度は曹節が劉協に聞いた。
「劉協様は、私のことは嫌いですか?」
「そんなことはない。むしろ、好きだ。愛している。幸せに暮らして欲しいと思っている」
「私も、劉協様を愛しています。だから一緒に居れないのは、すごく辛いです」
劉協は驚いた。自分が愛されているなどと、微塵も考えたことがないからだ。
二人はしばし見つめ合った。劉協は曹節の瞳の中に、何かを垣間見た。
劉協は曹節を抱き寄せ、唇を奪った。長い口づけのあと、曹節は笑っていた。
「嬉しい・・・初めてだったんですよ」
「私もだよ、曹節」
抱き寄せたまま、劉協は真面目な顔をして言う。
「曹節、これからは何が起こるかわからない。曹丕殿などにも、もう会えないかもしれない。
 それでも、私についてきてくれるのか?」
「構いません」
「わかった。・・・もう離さないからな」
「はい!」

2騎は門を通ると、そのままどこかへ走り去った。
時代に翻弄された夫婦の、第2の人生が始まった。

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